情けは人の為

 午後8時すぎ、曇天。気温25度以上。今日も、暑い一日であった。昼間は外出も憚られるほどの炎天下で、まさに陽に焼かれる塩梅であった。

 アパートの賃貸契約時に保証会社に加入すると云うことがある。近年では、特にそれが珍しいことではないそうで、私のところでも加入している。もともとは私のところでは25年まえの入居時に保証人を立てており、父親が保証人と云うことで、不動産会社でも父親もしくは親族が保証人で問題はなかった。しかし、今は父親が他界し、保証人になる親族がいなくなったので仕方なく保証会社加入の運びとなった。

 保証会社に加入すると、生命保険や医療保険のように保証金の支払いが発生する。月に換算すると、ひと月1000円ぐらいのものであろう。しかし、加入時に5万円ほどの新規加入料を取られ、また別に手数料なるものも取られた。そして、一年が経過するごとに1万2000円の保証料の請求である。また、これとは別に2年に一度契約の更新ということで家賃ひと月分取られる。たびたびの請求で、ほんとうに、これだけの価値があるものなのか疑いたくなる。ホームレスになるのはたいへんなので、仕方なく我慢しているが、築50年の風呂なしアパートに3万9000円の価値があるとも思えない。

 結局、私が保証会社に加入しても、万が一のときは大家を保護するためのもので、私の為にはならない。どこかの窮迫したアパート住まいの人が家賃を滞納したり、孤独死したときの為のもので、私が負担すべきものではないはずである。しかし、時代は変化している。より合理的に、富める者は富み、痩せる者は、より痩せるようになっている。

 ちょっと前までは、なぜ、人々がネットカフェに連泊するのか判らなかった。あんなところは半日も居られるものではない。しかし、今は判った。アパートに、簡単に入居できないからである。今の時代、不動産屋はホームレスをつくらないことよりも、優良な居住者探しに躍起であり、社会貢献の観念、使命感などは指の先程も持ち合わせていないのである。

 いつから、こんな世の中になってしまったのか。街に温かみはなく、ぎすぎすしている。35年前は、東京の雰囲気もこんな感じではなかった。ゆるかった。街は、温かくゆるい感じであり、ゴムのように伸びがあり、人々の心にも伸びがあった。やさしさがあった。