博物館見学

 午前9時半すぎ、曇天。土曜日は、マキコとふたりで、ひさしぶりに上野に行った。
 自転車に乗って阿佐ヶ谷駅にむかったとき、異様に風がつよく帽子を飛ばされ、併し、人に拾ってもらって、わるいような、良いような、出だしであった。家を出るときは、上野行きをはっきりと考えていたが、あまりに風がつよく、暫し、躊躇して阿佐ヶ谷神明宮で参拝して、それから、一日の行動を考えようと思った。マキコに相談すると、10分間で済む駅前での散髪云々と言われ、それも良いかと思い、散髪屋に行くと、散髪を待つ人たちが4、5人ならんで店のなかに坐っていて、やはり逡巡し、結局、阿佐ヶ谷駅から上野駅をめざして電車に乗った。
 もともと、それほど強い動機があるわけではないので、すこしのことで行動が左右していった。行ってもいいし、行かなくてもいいわけである。まさに、風に吹かれて、あっちに、ふらふら、こっちに、ふらふら、である。
 上野駅を降りると、博物館に行くつもりが、ふらふらといつもとちがう改札口を降り、気分をかえてみた。用事のない気儘な散策は楽しい。

上野駅前交差点。左前方にはアメ横の通りがある。
 上野交差点のところから石段を上ると、上野公園である。25年程前に来て、見学した西郷隆盛銅像がある。犬の名前はたしか「つん」であった。

▲テレビ等のメディアではよく見かけるが、実際に見たのは数回しかないと思う。
 銅像から彰義隊墓所を見学して、遅い桜の花見客を横目に、清水観音堂にゆき、参拝する。ここは浮世絵の名所江戸百景にも描かれた古刹で、京都の清水寺を模している。規模は小さいが、所謂、清水の舞台もある。その舞台の縁では、一日早い「花まつり」がひっそりと行われていた。私たちも賽銭箱に浄財を入れ、小さな銅製の柄杓で、お釈迦様の立像に甘茶をかけた。
 それから、公園の正岡子規の野球場のある太い通りを抜けて国立博物館へ行った。前回は、考古室の見学であったが、今回は、東洋館の見学である。

▲東洋館の一階から表慶館を望む風景。
 東洋館では、おもに石仏、青銅器を見てまわった。

▲中国の石仏にならんでいたが、顔立ちはインド、中東のひとのようである。
 最近は、出掛けるのは、いつも義務的なものばかりで、うんざりしていたので、無理してでも行楽をしてみた。すごく行楽がしたい、と云うのでもなかったが、やはり、来てみると、楽しい。仕事のような義務感がないので、心の赴くまま一日をすごした。