続・版画家の休日

 午前11時、曇天。気温27度程。三島の夏も、暑い。父から壊れていると申告のあったエアコンは、普通にリモコン操作をすると、正常に動いた。どうも、父は、リモコン操作ができないようである。歳を取ると、だんだん失われてゆく機能がある。簡単なことでも、できなくなる。耳が遠くなり大音量でテレビを見ている。家の中は、まるで映画館のような臨場感である。とくにコマーシャルは2割増の大音量になり、耳栓をせずにはおられない。
 話はかわり、先日、三島市役所に行った際に、三島大社にも、久しぶりに立ち寄った。平日の大社は閑散としていて気分がいい。広い空間が、屈託を、いっとき払うようである。本殿に参拝して、鹿園で、鹿を見学した。鹿の鼻のまわりが、泥でよごれていて見ていて気持ちわるいが、唇のあいだから一瞥できる歯が、思いのほか、小さく、白く、きれいで、私の歯より余程きれいであった。それから、宝物館へも立寄り、冷房のきいた館内で涼む。長椅子に座る。私のほかに、来館者はいない。国立博物館などに比べれば、あまり広くない館内であるが、それでも博物館であるから、それなりに広い。国宝に指定されている北条政子の梅蒔絵手箱は、よその展覧会に出張していて展示してなかった。源頼朝公が墨書された文書はあった。花押が「藤」の文字の草書のような形をしていて興味深かった。

三島大社にある源頼朝公、北条政子が座ったとされる石。


 実家の片付けをしていて、懐かしい物が出てきた。私が中学生、高校生の時分に、近所の畑で表面採集したものである。

▲3割もない残存の土器片を無理やり補修復元した。白い部分は石膏である。


▲今では失ってしまった私の無暗な情熱が、この器にはある。