「ton paris」と出逢った

 午後4時前、晴天。ほんとうに、よく晴れた一日である。そして、わりあい暖かい。自転車を手で押して、図書館まで行く。日頃、出歩く機会が少ないので、すこしでも歩かないと足腰が萎えてゆくと心配して歩いている。
 図書館で「ろくでなし子」の本を検索する。本は貸し出し中で、しかも貸し出し予約が二件あり、当分借りられそうもないので図書館での借り受けは断念する。この「ろくでなし子」は漫画家らしく、併し、わいせつ電磁的記録等送信頒布などの罪で起訴されている人で、私としては多少関心があるのでいろいろ調べているが、取り上げられ方はどうあれ、テレビ新聞等で報道されると知名度は格段にあがるようで、それが図書館での書籍貸し出しにも影響している。
 仕方がないので図書館の棚をさまよい、いつものように美術書の棚に行き着く。なにげなく目に留まった本に「ton paris」茂田井武著 講談社刊 2010年があった。手に取ると、表紙に図書館特有の保護ビニールが掛けてあり、併し、随分汚れている。小口も三方ともきたない。所謂経年によるシミ、汚れが感じられる。恐るおそる汚れのすくなそうなところに手をやってページをめくってみると、本の中ページまで汚れやシミ、ヤケがまんべんなくある。併し、しばらくして慄然とした。これは汚れやシミではなく、それらをカラー印刷した本だとわかったのである。当時のスケッチブックかなにかの完全復刻本であった。ページを、1ページめくるごとに、茂田井武の詩情あふれるメルヘンの世界が香ってくる。私は、近年これほど豪華で充実した時間を感じたことがなかった。早速、ネットでこの本の詳細を検索してみると、アマゾンやヤフーで新刊として取扱いがあった。・・・たいへん遅ればせながら、この本を出版した講談社に賛辞を送りたい。