藤澤清造と西村賢太

 午前10時半すぎ。窓外は雨ふり。睡眠障害のように睡眠時間がばらばらになっていて、いったい何時寝て、何時起きていたのか判らなくなりつつある。
 ひさしぶりに、殆ど20年ぶりぐらいに本格的な気持ちで文章を書こうと思っている。そう思いついた最初、一見敷居の低そうなホラー小説を書こうと思いついたが、併し、それはあまりにも自分のこれまでやってきていた方向性とちがうので、これはひとまず保留にして、純文学の、尾崎一雄檀一雄といったところの私小説の方向の物を書いてみようと思う。併し私は、なにしろ普段から不勉強で小説らしいものをまったく読まないうえに、小説的思考も停止しているので、何処までやってゆけるのかまったく判らない。遅蒔きの46歳の老書生は鉛筆の先を舐めなめ一字一字をたしかめるように原稿用紙の桝目をうめてゆくしかない。が、これもまた、この世を渡ってゆく方策のひとつであるので、うまくゆく、ゆかぬは別にしてやらねばならぬ。
 たまたま藤澤清造をネット検索していたら西村賢太氏の名前が出てきた。西村氏は藤澤を私淑しているらしく、氏の書く小説は藤澤作品の香りがするようである。現代の日本の小説家にあって氏の作品世界は私にとって好ましく感じられている。