小説を読む

 午前9時、晴天。気温摂氏5度。すっかり逆流性食道炎のような塩梅となってしまった胃の腑と食道であるが人生はそれとは無関係のように進んでいる。そして、進ませてゆかねばならず、骨が折れる。
 芥川龍之介の小説「歯車」を読んでいる。この小説を読むのは何度目であったろうか。最初は中学3年生の頃で、その後、何度か読んでいたが、年齢を重ねるごと見えてくるものが変化してきて面白くもあり、興味も尽きない。今の私は芥川の没年齢をとうに越して、芥川が青年のように感じるようになってしまった。尤も、これは年齢の話にかぎったことで芥川の遺した仕事には幾らこちらが年齢を重ねようとも追いつきそうもないが。「歯車」は芥川が罹患していたのではないかと推測できる統合失調症の症状が描かれていて無気味であり、また怪談のようでもある。私が以前からこの作品に妙に心惹かれているのは発狂してゆく芥川の怖れが描かれているからだと、今回の読書ではっきりと確認することができた。私は狂的なものに惹かれてゆく体質だとはっきりと思った。