小説CDを聞く日々

 午後4時、晴天。気温1〜9度。もう陽は傾いて薄暗くなっている。冬らしく、寒い。暖房なしでは暮らせない。それは、たぶんに老齢の域に達したからと言えなくもない。木枯らしよりも、その事実がうそ寒いこの頃である。
 さて、木版漫画「羅生門」の制作も着々と進行して、今では15枚目の彫版に掛っている。順調にいけば来春の終わり頃には完成するかもしれない。うまく完成すればいいが、併し、今回の漫画はカラー画であるため発表の方法が定かでなく、その点が不安と云えば不安である。

▲「羅生門」15枚目の彫版作業風景。
 彫りの作業は単調故に、この頃は小説のCDやテープを聞きながらやっている。小説は、おもに芥川龍之介の作品で、CDの「河童」「羅生門」「鼻」「芋粥」「妙な話」「奇遇」「魔術」である。その他、江戸川乱歩のカセットテープの「人間椅子押絵と旅する男」、夏目漱石のCD「夢十夜」や織田作之助のCD「夫婦善哉」も聞いている。これらは最近になって、ふと、思いついて買い集めたものであるが、もともと持っている太宰治のテープ「佐渡トカトントン」や寺山修司のテープ「声のメモワール」、つげ義春さんのテープ「夢日記ねじ式」も聞いている。そして、三島由紀夫のカセットテープ「サーカス・旅の絵本・大臣」は25年以上まえから聞いている。それから、「学生との対話」「三島由紀夫 最後の言葉」もわすれられない。
 これだけのCD、テープを持っているが、聞いて作業してみると、あっ、と云うまに聞き終わってしまって、また、新しいものが必要になってくる。小説は、本とちがってCD、テープで聞いてみると、聞きやすく、接しやすいのでたくさんの量が必要である。図書館でCD、テープがあれば借り受けたいが、杉並区の図書館には無いようである。兎に角、私にとって小説は聞きだすと、止まらない麻薬性のものらしく、嬉しいような、困るような、なかば閉口している態である。