木版画「ばら園」試作

 午後11時半すぎ、曇天。雨上がりの夜空に月があり、湿気を含んだ空気が丸い光の輪を月のまわりにつくっている。
 昨日から木版画「ばら園」多色刷りの試作印刷を始めている。バレンを使って手刷りをしているが、不透明水彩絵具を使っているので、絵具が乾くのを待ちながら多色刷りをしている。そして、技術的に困難な印刷作業だけでなく、制作する私の熱意が不安定で、つくづく仕事はできるときにやるべきものだと痛感している。熱意とか自信と云うものは、いつでも一定して持続するわけではなく、むしろ不安定で心に留まりにくい性質のものである。頃合を計りながら、神経的な部分と肉体的な制約のなかでバランスをとって仕事をしている。
 前回の続きで「過去に気になった物たち」の掲載をしたい。今回は、トロフィーである。私にとっては最初に貰った物で、たぶん最後の物だと思う。

▲高校生時代に陶芸部に所属していた。
 高校の卒業記念に陶芸部の顧問の先生から頂いたトロフィーであったが、貰った当初は照れくさいような気がして押入れのなかに仕舞っていた。このトロフィーの重みが判りだした40代頃から書棚の上にいつでも飾って眺めている。今の時代では、高校の卒業ぐらいはあたりまえの時代になっている。併し、私の時代では、高校卒業は出来そうで出来ないものであった。