連休あけも雨

 午後4時半前、雨天。細かい雨が降っている。天気予報では、明日、明後日ともに雨降りである。科学的な予報は、あまりに正確で降る雨は情緒を欠いている感がある。
 私家版の小説集「負の域」の表紙絵の木版画が一枚出来上がった。彫版、刷り共に一枚だけなので仕上がりが早い。私の場合はやはり単色木版画が性に合っているらしい。多色刷り版画だと出来上がりの画像が頭の中で結びにくい。
 書棚から坂口安吾の「白痴」(新潮社刊)を取り出して読む。角が擦り切れて丸くなった文庫本であったが、この本をなかなか棚から探すことができなくて難渋した。私の記憶ちがいであったが、何故か書名の「白痴」を「いづこへ」と勘違いしてなかなか探すことができなかった。筋力の衰えだけでなく記憶のほうもだいぶ怪しくなってきたなと実感している。
 若年頃に、迂闊にも小説「いづこへ」の世界観に憧れてしまって身を持ち崩したが、併し、今では人生の出発点からこうなる運命だったと諦観している。それはおもに私の性情からくるものと、家庭環境に起因していたが、性情よりも多くは家庭環境、畢竟金銭の多寡によるものであった。