思い出を箱に

 午後9時前、曇天。気温摂氏8度。今日は、終日部屋のなかに閉じ籠っている。軀と心を休めようと思った。
 先日から過去をふり返る、過去の時間を収斂してゆく材料が届いていた。コレクション・ボックス、またはコレクション・ケースと云う名の額縁、厚さ2ミリのコルクシートである。それらを使ってルアー(疑似餌)を針金で固定してゆく。

▲ネットオークションでは、古いルアーがオールドルアーとして高値で取引されている。
 このように大仰なことになるのは仕方がない。小さいルアーは、釣り針もたくさん付いているので、扱いには難渋する。私ですら難儀であるので、他人であったら尚更である。10年後、20年後、更に50年と時間を経ると散逸はまぬがれないだろう。もっとも、纏めたからといって散逸しないとも限らない。しかし、しないと落ち着かない。
 約40年前、14歳の私は一時期、唯一の友人と共にブラック・バス(魚名)のルアー釣りに凝ったことがあった。もっとも、私はぜんぜん釣果がなく終わったが、それでも楽しかった記憶がある。
 ルアー釣りの醍醐味は、ダイナミックな釣りにあるが、しかし、私はおもに疑似餌であるルアーのほうに目がいっていた。ルアーには、魚の形を模したプラグルアーと匙の形が変化したスプーンルアー、そして、耳に飾るイヤリングのような装飾的ともいえるスピナールアーがある。他にもミミズその物のような形のワームルアー、鉄の短棒のような形のジグルアーもあるが、私は、それらが好きではない。勿論、ルアーの形体の好き嫌いで釣りをするのではないが、私は好き嫌いで釣りをしていた。結果、釣果はゼロで終ったが、やはり、わるい感じはない。私は、ルアー釣りにたいして釣果ではなく、ルアーの造形美、蒐集性をもとめていたのかもしれない。
 ボックスのなかは、左上からヘドン製の「スーパーソニック」4個、自作品1個、その横上からラパラ製のフローティングタイプのジョイント・プラグルアー2個、その下のフローティングタイプのプラグルアー2個は詳細不明、たぶん日本製だと思う。その下のBROOK'S REEFERの銘があるフローティングタイプのジョイントルアー・・・と列記するのはたいへん。ボックスのなかにはルアーの下に名札を貼って第三者にも判るようにしてある。もっとも興味を持って廃棄しないとはかぎらないが、なるべく捨てられないように工夫は怠らない。