「マルセル・デュシャンと日本美術」展へゆく

 午後10時前、曇天。気温15度。もう襟巻なしには出歩けなくなった。
 今日の土曜の午後は、以前から「マルセル・デュシャンと日本美術」展へ行くつもりになっていて入場券も2枚入手していた。マキコとふたりで、中央線の電車に乗り、中野駅で乗り換え、そして、神田駅で乗り換えをして、上野駅へ到着、そこから、ひと駅分ぐらいを歩いて国立博物館の平成館へむかった。

▲博物館から見る上野公園と遠景のビルディング
 ここまでで、かなり足腰にダメージがきていて、博物館内のベンチに座って、ひと休憩して、サンドイッチを食べる。

▲博物館内の中央広場にそびえる大樹。
 展覧会場へ入ると、そこに、いきなり車輪が出迎えた。

▲後年制作のレプリカであるらしい。
そして、油絵作品が10点ほどならび、

▲記念碑的油絵作品が展示されていた。
 大ガラス、チョコレート粉砕機などの作品もあり、楽しい。30数年前の、美術に関心が出始めた頃のような気分になる。そして、とうとう便器の登場である。

 美術に関心のない人たちにとっては、ただの男性用便器にすぎないが、美術マニアにとっては100年前から注目していた便器であった。
 それから、わたし個人としては、この作品も忘れられない。

▲一見すると工業製品、なにか電気関係の部品のように見える。
 そして、いよいよ日本美術作品とデュシャン作品との邂逅である。

本阿弥光悦の硯箱である。
 この作品は、以前、五島美術館開催の「本阿弥光悦」展で、国宝の本物の方を見ることができずに口惜しい思いをしたことのある硯箱で、そのときはレプリカの硯箱を見ながら本物を想像して、いつか本物を見たいものだと念じていた。そして、とうとう私は本物を見たのであった。併し、実は、本物、レプリカ、どちらの硯箱も光悦自身が作ったものではなく、当時の木地職人、蒔絵職人が作ったものでは、と今では思っている。そう云うことを、この展覧会では提示しているのではと思った。
 また、光悦作品だけではなく、写楽歌麿の複製作品としての浮世絵、龍の絵柄の元の絵とコピー的な絵の掛軸二点、既製品としての黒茶碗一点、竹製の花入れ一点なども展示されていて充実した午後であった。